いち早くキュレーションを実践しているはてなブックマークニュースのすごさ
まず、キュレーションとはいったい何なのでしょうか。
キュレーションは情報を収集し、選別し、意味づけを与えて、それをみんなと共有することです。
キュレーションは次のような理由から今注目されています。
- 今や誰もがコンテンツの制作者になれる
- インターネットには玉石混合様々なコンテンツが溢れるようになった
- その結果本当に必要な情報を手に入れるのが難しくなっている(単なるアグリゲーションはもはや意味を無さなくなった)
- このような状況で最も必要とされるのが信頼のある企業(マスメディア企業)によるキュレーション、すなわちコンテンツの「収集」「選別」「意味付け」「共有」だ
- そして「キューレーション」こそがマスメディア企業復興の鍵となる
- 米国には既にキュレーションで成功している事例もある
これを聴いて僕が真っ先に思い浮かんだのが、はてなブックマークニュースです。
はてなブックマークニュースは特にコラムにおいて、あるテーマに沿った様々なウェブページを「収集」・「選別」した上で、それらを1つの文脈の中「意味付け」しながらまとめ上げ、公開(「共有」)しています。
注目すべきは扱っているテーマです。そこにはいわゆる「はてなー」が好むと思われるテーマはありません。例えば、現時点で最新のコラム5つのタイトルは次のようになっています。
- 週末は気の合う仲間とお茶会!気楽な“野点”のススメ - はてなブックマークニュース
- 大人が楽しめる魅力がいっぱい!「植物園」で春を満喫しよう - はてなブックマークニュース
- 切りすぎ、揃いすぎを防ぎたい!美容師さんに学ぶ「前髪の切り方」 - はてなブックマークニュース
- Twitter上でも大盛り上がり!2010年のエイプリルフール - はてなブックマークニュース
- 自分が使いやすい耳かきを選ぶには?「正しい耳かきの方法」 - はてなブックマークニュース
どれも一般的なテーマばかりです。明らかに「マス」を対象としています。そしてこれらのコラムには多くのブックマークがついており、実際にマスに届いていることがわかります。はてなブックマークニュースはキュレーションをいち早く実践し、成果を上げているのです。
こういう取り組みをいち早く始めていたはてなは、やっぱりまだまだすごい企業だなあと思います。
ソーシャルフィルタリングサービスとして、はてブのお気に入りよりtumblrが優れている理由
ソーシャルフィルタリングサービスのことをここでは、「ユーザをフォローすることにより、そのユーザの思考や感性でフィルタリングされた情報を受け取ることができるサービス」と定義します。
例えばtumblrでは、ユーザをフォローすることにより、そのユーザがポスト・リブログした情報を自分のダッシュボードで受け取ることができます。また、はてなブックマークでは、ユーザをお気に入りに追加することにより、そのユーザがブックマークしたページを自分のお気に入りページで受け取ることができます。なお、ユーザのフォローは1人だけでなく複数人に対して行うことができます。
さて、ここからが本題なのですが、僕はソーシャルフィルタリングサービスとして、はてなブックマークのお気に入りよりtumblrの方が優れていると考えます。
その理由は次の2つ。
- クリックせずに情報にアクセスできる
- Webページの中の情報までフィルタリングされている
1つ目の理由ですが、はてなブックマークはあくまでブックマークなので、フィルタリングされた情報にアクセスするためにはそのブックマークをクリックして、リンク先のページを読まなければなりません。それに対してtumblrでは情報がそのままダッシュボードに表示されます。わざわざリンク先に飛ばなくても、tumblr内でフィルタリングされた情報にアクセスできるのです。
さらに2つ目の理由なのですが、はてなブックマークの場合はリンク先のページを読んでも、そのページのどの部分を(そのページをブックマークした)ユーザが評価したのかわかりません。それに対してtumblrはWebページの中でも特にユーザが評価した部分がクリッピングされるので、Webページの中の情報までフィルタリングされて届けられるのです。そしてこのアーキテクチャ(仕組み)が情報の粒度をWebページよりも細かくし、クリックせずに情報にアクセスできるというメリットを生み出したといえるでしょう。
『ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ設計』を読んで
IA100 ?ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ設計
- 作者: 長谷川敦士
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2009/10/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 11人 クリック: 227回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
Webサイトの設計に関して、わかりやすく体系的にまとめられていました。良書だと思います。ただ、実例があるともっとよかった。例は随所に挙げられているのだけど、実例はあまりありませんでした。そのため、ペルソナ法やシチュエーション・ニーズ分析など、様々な手法が紹介されているものの、いまいち説得力に欠けるような感じがしました。
「こういうの問題があって、それをこういう手法で分析して、そこから得た解決策を適用したらうまくいった」みたいなストーリーがないから説得力がない。
そのあたり、女子マネドラッカーはすばらしいです。マネジメントのメソッドを巧くストーリーに織り交ぜながら紹介しています。
ただし、単純にストーリーがあった方がいいというわけではありません。本書のようなリファレンス本の方が情報量が多いことや、特定の情報を参照しやすいといったメリットがあります。そこはまあ、一概には言えませんね。
話が脱線してしまいましたが、本書を読んで面白かった点をピックアップしてみます。
情報を組織化・文脈化して知識に
そのままでは意味をなさない「データ」が、統合されることで「情報」となり、この「情報」がさらに組織化され、文脈に沿ったかたちになることで「知識」となり「知恵」となる。この統合・組織化・文脈化を行うのが、情報のデザイナーたるインフォメーションアーキテクトであるのだ。(p1.情報アーキテクチャとは何か)
「情報を組織化・文脈化して知識に」というのが僕の興味とかなり近いです。ただそれが情報アーキテクチャの領域で語られることに少し違和感があります。情報のアーキテクチャというよりサービスとかシステムのアーキテクチャなのではないかなあと。それも含めての情報アーキテクチャなのかもしれませんが。
パターンランゲージ
前に、パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則を書店で流し読みしたことがあるのですが、そのときはよくわからなかったパターンランゲージという概念を一応わかった気になれました。なんとなく単純なツリー構造では表現できないものまで表現できてしまうところに可能性を感じました。
時間変化による層=ペースレイヤリングという考え方
米国のインフォメーションアーキテクトであるPeter Morvilleは、フォークソノミー(タグなどの参加者による分類)を最も変化の速い層、情報自体が持つ分類形態(タクソノミー)や意味(オントロジー)などを変なの遅い層に位置付け、時間の変化に応じてフォークソノミーをタクソノミーへ影響させていくような系全体の進化を推奨している。(p9.ペースレイヤリング)
時間がたつことによる変化のしやすさという視点は僕には全くありませんでした。これは面白い。ただそれをどう適用すればいいかは全く思いつかないんですけど。
メンタルモデル分析
ユーザの振る舞いについて、行動だけでなく心理を分析するところが面白い。同じ行動をとっていてもユーザの心理は様々ですからね。
コンテンツ分類と情報の発展
時間発展した系統樹の、あるタイミングでの断面が「分類」であるといえる。たとえば、ロックのジャンルはもともとひとつであったものが、現在では「ポストロック」「シューゲイザー」等に細分化されている。(p31.コンテンツ分類と情報の発展)
情報はその分野の情報量が増えると、細分化して把握する必要が発生し、分類が発生する。(p31.コンテンツ分類と情報の発展)
なるほどなるほど。とても興味深い。長いスパンで分類の変化を分析したら面白そう。
サイトでもてなす
サイトに来た人がきちんと目的を達成できるかを「サイトでもてなす」と表現している(p39.Webプロジェクトの全体像)のですが、もてなすという意識は重要だなと感じました。
次はアーキテクチャの生態系を読みたいなあ
- 作者: 濱野智史
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2008/10/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 99人 クリック: 1,146回
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コミュニティや集合知を理解するために、マーケティングを学びたい
数年前からWeb2.0の流れのなか、コミュニティや集合知を扱うサービスが多数出てきました。
mixi、YouTube、ニコニコ動画、はてなブックマーク、twitterなどなど。これらのサービスにはたくさんの人々が存在し、活動しています。そこには社会があります。
その中で人々がどのように振る舞うのか。積極的に情報発信をする人もいれば、それをただ眺めているだけという人もいます。批判的なコメントばかり書く人もいるでしょうし、肯定的なコメントしか書かない人もいるでしょう。もっと外に目を向けると、そもそもWeb上のコミュニティに参加するなんてなんか気持ち悪いとか、Webサービスなんて興味ないという人もいるでしょう。
また、人々の嗜好も様々です。おしゃれが好きな人、読書家、ギャル、サブカル好き、アイドルオタク、アウトドア派、インドア派。
世の中自分が思っている以上に色々な人がいます。だれしもが中学→高校→大学と進むうちに自分と嗜好が近い人たちが集まるコミュニティに属するようになります。例えば、普通高校から美術大学に進学すれば、周りはみんな美術に関心のある人ばかりになります。そんな中で、世の中がどういう人々で構成されているかというマクロな視点を持てている人は少ないのではないでしょうか。
人々の振る舞いや嗜好の違いは、いったいいくつに分類できて、それぞれどのぐらいの割合で存在するのか。それがわかれば新しいサービスのアイディアやデザインを考えるのに役立つ気がします。今流行(?)のユーザー中心設計にもつながる気がします。
というわけで僕は最近マーケティングに興味があります。マーケティングの世界ではこのページに書いてあるように顧客を分類し、それに基づいて戦略を考えているからです。
僕が購読しているブログの1つである、tate-labの舘野さんもマーケティングに興味を持っているようで、いくつか本が紹介されていました。以下の本はぜひ読んでみたいと思います。
- 作者: 藤井大輔
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2009/02
- メディア: 新書
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リクルート「創刊男」の大ヒット発想術 (日経ビジネス人文庫)
- 作者: くらたまなぶ
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/08
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 36回
- この商品を含むブログ (29件) を見る
あと、コミュニティについて知るためにこれも。
コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来 (ちくま新書)
- 作者: 広井良典
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/08/08
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- 購入: 16人 クリック: 261回
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いいものが広まるtumblrの設計思想
tumblrはreblogという仕組みにより、気に入ったコンテンツを簡単に自分のtumblelog(ブログ)へコピーできます。この仕組みにより、tumblrでは良質なコンテンツがすぐに広まるようになっています。
また、tumblrでコピーできるのはコンテンツだけではありません。tumblelogのデザインテーマまでコピーできるのです。
このデザインいいなと思ったtumblelogの右上に表示されている、「Install Theme」ボタンをクリックすると、そのデザインを自分のtumblelogに取り入れることができます。
コンテンツだけでなくデザインまで簡単にコピーできるというこの徹底ぶりから、tumblrはコピー文化を育むことにより、いいものが広まる場を作ろうとしていることがわかります。
サービスデザインから見るtwitterとtumblrの違い
twitterもtumblrも「フォロー」という仕組みにより、他のユーザーとつながります。また、「タイムライン」という仕組みにより、twitterの場合はつぶやき、tumblrの場合はテキストや写真といったコンテンツが時系列に表示されます。twitter上のつぶやきはretweetされることにより伝播し、tumblr上のコンテンツはreblogされることにより伝播します。
しかし、このように同じ仕組みを用いていても、両者のサービスデザインには大きな違いがあります。twitterはコミュニケーションを目的としていて、tumblrはコンテンツの流通を目的としている(こう言い切っていいのかわかりませんが)ので、両者の間に大きな違いが存在するのは当然なのですが、どのようにサービスをデザインすることでその違いを表現しているのかをここでは見ていきます。
違いその1:フォロー関係の表示
twitterの場合は、自分が誰をフォローしていて、誰にフォローされているかを確認することができます。これはつぶやきを非公開にしているユーザーを除く全てのユーザーに当てはまります。しかしtumblrの場合そうではありません。デザインテーマによっては自分が誰をフォローしているかがわかるようになっていますが、誰にフォローされているかはデザインテーマに関わらず自分しか知ることができません。つまり、tumblrでは人間関係が表に出ないのです。
違いその2:retweetとreblog
retweetもreblogもつぶやきやコンテンツを伝播させるという点では同じです。しかし、両者の間には次のような違いがあります。twitterではあるつぶやきが3人にretweetされたとしてもタイムラインに出てくるのは1回です(たぶん)。一方tumblrではあるコンテンツが3人にreblogされると3回タイムラインに表示されます。つまり、評価されたコンテンツは繰り返し表示され、印象に残ると同時に、見逃す確率が減るのです。
これらの違いから、twitterがソーシャル性を重視しているのに対し、tumblrはソーシャル性を極力減らしてコンテンツに焦点を当てているということがいえるのではないでしょうか。
ただし、tumblrも少しずつソーシャル性を強めてきています。前には無かったフォローされたことを通知する機能や自分のポストに対してリプライを受け付ける機能がいつの間にか実装されていました。tumblrのサービスデザインはけっこうミステリアスなので(笑)、個人的にはtumblrがどう発展していくか楽しみです。日本語化されるみたいですし。
→ One of the most exciting aspects of localizing... | Tumblr Staff